作成者:菅原 英美
皆さま、大変お世話になっております。Japan Asia Consultantsの菅原でございます。当ブログをご覧いただきありがとうございます。今回は、インドネシアにおける「生活必需品の税制優遇措置」について、最近の現地の状況や、企業の実務に関わる注意点も交えてご紹介したいと思います。
コロナ禍が落ち着いた今、インドネシアの経済は順調に成⾧を続けており、日々の暮らしの中でもBtoC産業(一般消費者向けビジネス)が活発になっているのを実感しております。
とりわけ、日本でもお馴染みのレストランや食品・飲料を街中でよく見かけるようになり、インドネシアにお住まいの皆様にとっても、こうしたサービスや商品がすっかり日常の一部になっているのではないでしょうか。
その一方で、都市部の最低賃金が月に5万円弱という状況の中で、インドネシア政府がどのようにインフレを抑制しているのか、不思議に思うことがあります。日本でも、かつて「米騒動」のように、米価の高騰が社会不安につながった事例がありました。もしインドネシアでも同様の状況が発生すれば、すでに日常化している抗議デモが一層激化する恐れもあり、深刻な社会問題となりかねません。
このようなリスクを未然に防ぐために、インドネシア政府は一部の食料品を「国民にとって非常に必要とされる生活必需品(Barang Kebutuhan Pokok Yang Sangat DibutuhkanOleh Rakyat Banyak)」として区分し、付加価値税(PPN)を免除する措置をとっています。
なお、「生活必需品」とされる品目は、国の経済状況や国民生活への影響を踏まえて、随時見直される可能性がありますが、2025年現在は以下のような食品が含まれます:
a. 米および籾(もみ)
b. トウモロコシ
c. サゴヤシ(サゴ)
d. 大豆
e. 食用塩
f. 肉類
g. 卵類
h. 牛乳
i. 果物
j. 野菜
k. イモ類
l. 香辛料類
m. 食用砂糖
n. 魚類
これらの品目は、国民の健康的かつ安定的な食生活を支える基盤であり、価格上昇が国民生活に与える影響が非常に大きいため、政府が特別に税制上の保護を行っているようです。
一見すると、付加価値税(PPN)の免除は前向きな政策なように思われますが、企業にとっては注意が必要です。PPNについては皆さまもう熟知されているかと存じますが、PPNは「売上にかかるPPN」から「仕入や原価にかかるPPN」を差し引いて、毎月納税額を計算する仕組みです。しかし、今回のように売上がPPN免税の対象となる場合、仕入や原価でかかったPPNは控除の対象にならず、そのままコストとして処理されます。つまり、仕入時に支払ったPPNが戻ってこないのです。このため、PPN免税=必ずしも企業にとって有利、とは言い切れず、免税売上を扱う場合は、原価PPNを「貸借」ではなく「損益」として管理する必要があることを念頭に置いておくことが大切です。
ちょっと堅い話になってしまいましたが、こうした生活必需品に関する税制は、インドネシア国民の暮らしを守るための重要な制度である一方、企業にとっては思わぬ落とし穴もあるので、知っておくと安心です。ちなみに最近、日本では「令和の米騒動」とも言われるような米価の高騰が続いているようですね。私も今、一時帰国中で日本にいるのですが、ジャカルタに引っ越す前に比べてお米が倍以上に高くなっていて本当にびっくりしました。
どこに住んでいても、日本のお米はやっぱりおいしいですよね。だからこそ、誰もが手に取りやすい価格で買えるようになってほしいなあと、しみじみ思います。また新たな気づきがあれば、なるべくわかりやすく皆様に情報発信できればと思います。