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第4回 JAC’Sブログ
「プラボウォ大統領のメーデーでの発表について 」

2025. 05. 19 | JAC'sブログ

作成者:光武大地

 5 月1日のメーデー(国際労働者の日)はインドネシアでは祝日になります。この日は毎度、労働組合集会が開催されていますが、今年はプラボウォ大統領も出席するという異
例の事態となりました。大統領選挙時はジョコウィ大統領の人気をバックも大きなサポートとなり当選しましたが、当選後は公約の要である給食無償化サービスをすぐに行動に移したり、今回のように労働組合集会に出席したりするなど、自身への支持獲得に積極的に動いているように感じます。時期尚早かもしれませんが、このような動きを一貫して行うことで第二期は自身の支持基盤のみで当選したいという考えがあるのかもしれません。

話はメーデーの労働組合集会に戻りますが、その場でプラボウォ大統領が発表した内容の一部が気になります。以下は集会で検討を発表した内容になります。

① 全国労働福祉評議会の設立

労働者の状況を総合的に調査、労働関連法規の見直しや改善に関する戦略的な提言を大統領に行う役割を担う。

② 解雇対策タスクフォースの創設

不当な解雇(解雇の監視、評価)から労働者を保護(労働者の権利を守る)するためのタスクフォースの創設

③ アウトソーシング制度の廃止

④ 家事労働者保護法案(RUU PPRT)の推進

家事労働者(メイドなど)の権利と福祉の保護を強化することを目的とした法案

⑤ 労働運動家マルシナの国家英雄指定への支持

マルシナ女史はインドネシア1990年前半に労働条件の改善や最低賃金の適用などを求めて交渉の最前線で活動し、拉致、殺害されてしまった活動家ですが、インドネシアの労働運動や人権運動の象徴とされています。

この5つの発表の中で、「③アウトソーシング制度廃止の検討」については、慎重になる必要があります。2012年以前は曖昧な法規であったことから製造現場でも派遣社員を活用していましたが、2012年の労働移住大臣規則第19号でアウトソーシングが行える業務を大幅に限定(清掃、給食、セキュリティ、輸送等)したことで、会社は派遣社員を直接雇用に切り替えたり、今まで契約社員だった社員を正社員に切り替えたりなどの緊急対応を行いました。その結果、労務費が高騰し経営困難となった製造会社は多く、何年もの年月をかけて体力を戻してきた経緯があります。

そのような出来事から一転し、2021年のオムニバス法施行でアウトソーシングに関する規定も緩和されたことで今日に至るのですが、それをまた5年も待たず変更・廃止するというのは如何なものとかと感じます。毎年200-300万人の労働人口が増加するインドネシアでは労働者の権利や福祉の向上ももちろん大事ですが、雇用の拡大も重要事項だと思います。